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1分でわかる「たたら製鉄」

最近、岡山県新見市で「たたら製鉄」を再現する体験学習会が開かれたというニュースを見ました。今、ちょうど「古代の製鉄」が自分の中でホットワードになっていたので、たまらなくワクワクし、ワクワクついでに古代から継承されてきた「たたら製鉄」についてまとめてみましたのでよかったらご覧ください。

Japanischer Tatara-Ofen mit Flügelgebläse (18 Jahrhundert).jpgたたら製鉄における踏み鞴(ふいご)による送風作業(『日本山海名物図会』所載)。

Wikipediaより転載

 

 

たたら製鉄とは?

たたら」という言葉は、ジブリ映画「もののけ姫」を見ことがある方は耳なじみのある言葉だと思います。物語のカギを握る重要な場所として出てくる「たたら場」、まさにあれは「たたら製鉄」の製鉄所のことを指しています。

 

「たたら製鉄」は詳細な起源は不明ですが、日本では古代に始まり6世紀以降全国に普及していきます。「たたら」とはアコーディオンについている蛇腹のようなもので、炉に空気を送り込みます。上の絵でみんなが踏んでいるものが「たたら(ふいご)」です。その語源は製鉄法がタタール(北アジア)から伝わり、「タタール」がなまって「たたら」になったと説明されることもありますが、諸説あり正確なところは不明なようです。

 

 

たたら製鉄でしか作れない鉄

「たたら製鉄」ではまず、木炭砂鉄、あるいは鉄鋼石を一緒に加熱します。すると木炭の炭素と砂鉄・鉄鋼石の不純物が高温で結合し、溶けた純度の高い鉄だけが流れ出てくるという仕組みです。鉄を溶かすために炉を高温にする必要があるのですが、ふいごは空気を送り込み火力を上げるために使われます。この絶妙な炉の温度こそが「たたら製鉄」でしか作れない鉄を生み出す秘訣のようで、現代の西洋式製鉄法は温度が高すぎるため、刃物にとって有害な不純物まで溶けて混ざってしまうのだそうです。

その結果「たたら製鉄」で作った鉄は固く曲がらずさびにくい性質を持ち、刃物にした際は研磨しやすく、日本刀においては波紋がきれいにつくという特徴がでてきます。特に日本刀づくりにおいて、この「たたら製鉄」で作った鉄は欠かせない素材とされてきたのですが、西洋式の方がコストや手間がかからず大量の鉄を作れるので、「たたら製鉄」は明治以降は生産量が急激に減ってしまいました。

 

一時は完全にその伝統が途絶えようとしていましたが、近年、日本刀などの文化保全のためにその技術の継承が必要だという声が上がり一部の技術者がその技法を復活させ現在でも「たたら製法」で鉄は作り続けられているのです。

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古代における製鉄の意味

話は少し変わりますが、古代において製鉄は、日本各地にいた豪族たちの力関係を一変させてしまうほどの重要な技術でした。鉄でできた武器による武力の向上はもちろん、農具や灌漑工事の道具に使われることによって、飛躍的に作業効率が上がりその国の生産力は格段に向上しました。

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文献的には5世紀半ばにはすでに日本の製鉄は始まっていたと考えられています。確かな証拠があるものとしては、6世紀半ばの吉備地方(岡山・広島の辺り)や出雲地方(島根県)の遺跡の中に製鉄の痕跡が認められます

 

先ほど、説明したように製鉄技術はその地方の国力を大きく押し上げる力があるので、製鉄の遺跡が残る吉備地方・出雲地方は、古墳や発掘品などから見ても当時の支配者・大和王権に並ぶほどの力を持っていたことがわかっています。特に吉備地方に対して、大和政権は反乱の鎮圧という名目で何度も出兵し、その国力を削ぐことに力を注ぎました。吉備地方には前方後円墳が多数存在し、古墳の周りに並べられた埴輪も吉備地方から始まり広がったと考えられ、弥生時代後期から古墳時代にかけての吉備の国力や文化の発信力は相当なものがあったことが想像できます。それもやはり製鉄の技術があってこそだったと思われます。

 

鉄製品や鉄はもっと昔から大陸、朝鮮半島から輸入してきていたようですが、日本の製鉄がいつどこから始まったかを断定するのは今の科学ではまだまだ難しいようです。しかし、だからこそ製鉄に関する新しい発見や情報に出会うたびに、その製鉄技術がその地方の運命を変え決定づけていたのかもしれないと想像しワクワクしてしまいます。これからも、もっともっと新しい鉄に関する考古学的な発見が出てくるのを一ファンとして楽しみに待ちたいと思います!

 

たたら製鉄のニュースから古代の製鉄に思いをはせてみました!最後までお読みいただきありがとうございました!