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令和3年8月15日の諏訪湖の内水氾濫で気づいたこと。

以前、釜口水門の治水能力について調べて記事を書きましたが、今回の豪雨で気づいたことなどまとめてみましたのでよかったらご覧ください。

 

 

過去記事はこちら↓

 

 

 

 

目次

 

 

諏訪湖の治水能力の想定

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(8/15の釜口水門の様子)

 

過去記事で釜口水門の治水能力を考える際に2つの数値に注目しました。

 

計画高水位(けいかくだかすいい)と放水量です。

 

計画高水位とは護岸工事などする時に、そこまで上がることを想定する水位のことで、それを超えてしまうと危険な状態に陥ってしまいます。一方、放水量は諏訪湖の唯一の排水河川である天竜川に釜口水門からどれだけ放水しているかを知ることができる値になります。

 

過去記事にあるように諏訪湖の計画高水位は2.2m、限界放水量は毎秒430㎥でした。そこで、私は諏訪湖の水位が上がってきた際に次のようなツイートをしました。

 

 (※釜口水門のライブカメラ。これかなり使えます!→釜口水門管理システム

 

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 そして、こちらが豪雨があった8/14~8/16にかけての湖水位と放水量の変化です。

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<データは→釜口水門管理システム(諸量)より引用>

 

時間が表の下から上に流れるので少し見づらいですが14日から15日の昼頃まで水位が上がり続け、湖水位1.87mを頂点に少しずつ下がっていくのが見てとれます。

 

ここで計画高水位の2.2mまではまだ大分余裕があることがわかります。それでは今回の豪雨で諏訪湖畔に被害はなかったのでしょうか?

 

 

 

今回の豪雨による被害(8月16日時点)

詳細はまだ発表されていませんが16日の報道 によると、今回の豪雨で大きなものでは岡谷市では土砂崩れで3名の方が土砂に埋もれ亡くなってしまったのをはじめ、諏訪市でも十数か所の冠水、下諏訪町でも道路の水が中央線に流れ込み冠水し運休する事態になっています。私自身も15日に岡谷市、下諏訪町、諏訪市の湖畔の大通りで道路が冠水し、一部通行止めになっているのを何か所か目にしています。

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 (8/15 下諏訪町の道路冠水の様子)

実際に諏訪湖は溢れることはなかったわけですが、このような被害が起こったのは短い期間に想定の雨量を越えたことに原因があります。

内水氾濫と呼ばれるものですが、諏訪湖の水位が増してくると諏訪湖の水に押され、諏訪湖に流れ込む川や用水路の勢いが失われ水位が上がり、越水してしまうのです。また下水管に大量の雨水が入り、マンホールから噴き出してしまったり、排水溝による排水が間に合わなかったりして、低い土地に水が流れ込み冠水してしまいました。

テレビでは諏訪市の一階店舗の排水が逆流し、店内が水浸しになってしまっている映像が流れていましたし、JR東日本の中央本線では下諏訪町の諏訪湖畔を通る線路に、山側の道路から泥水が流れ込み数十メートルにわたって冠水してしまいました。つまり、いくら諏訪湖が溢れなかったとしても、短時間に排水能力を超える雨が降ってしまえば堤防の外でも浸水被害は起こってしまうのです。

 (追記:被害メモ  ◎岡谷市/第一次調査/床上浸水10件/床下浸水187件)

 

 

なぜ放水量を上げなかったのか

ここで一つ疑問が湧きます。先ほどの表を見てもらうと放水量は350㎥台で止まっています。湖水位が上がったために河川などが越水してしまったのですから、もっと限界放水量の430㎥に近い放水をして、水位を下げるべきではなかったのでしょうか。

 

ところがことはそう単純ではなく、実はこの時、天竜川は危険水位に達していていつ氾濫が起こってもおかしくない状態だったのです。

 

下の画像はYahooの河川水位情報(リンク→天竜川の水位情報 - Yahoo!天気・災害)です。

 

これは15日の朝5時ごろにスクショしたものですが、この時点ですでに紫色で表示されていることからわかるように危険水域に達していたのです。

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つまり、広い範囲で大量の雨が降って天竜川の水位が上がってしまうと、天竜川の受け入れられる放水量は想定を大きく下回ってしまうのです。今回の放水量の限界が350㎥だったのはそのためでした。結果、諏訪湖畔では浸水被害がありましたが、天竜川は危険水位をなんとか維持し、氾濫することはありませんでした。各地の被害のバランスを見たギリギリの判断が迫られていたのです。

 

 

総雨量は前回の平成18年豪雨を越えたのか

平成18年7月17日~19日の3日間にわたる豪雨では総雨量400ミリに達し、諏訪湖が想定していた水位を超えてしまい大洪水がおこりました。2541戸が浸水し、JR中央本線、国道20号線も37時間に及び全面通行止めになり、さらには天竜川の流域でも堤防決壊による被害が生じてしまいました。

 

今回(令和3年)の豪雨の諏訪湖流域の累計雨量は以下の通りです。

(わかりずらいですが表の下から上に時間が進んでいます。)

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<データは→釜口水門管理システム(雨量)より引用>

 

 というわけで、今回の総雨量は最大で266㎜でした。平成18年の400㎜がどれだけ凄かったかがわかります。

このことでわかったのは、前回の豪雨の後、諏訪市の川の氾濫や、天竜川の決壊を防ぐため国と県を挙げて護岸工事を取り組んだわけですが、今回くらいの雨でも短時間に大量の雨が降れば、ある程度の浸水被害は防げないということです。今の亜熱帯のような気候を鑑みると、また同じようなことが近々起こってもおかしくないと思います。護岸の対策とは別に自分や家族の命、財産を守る対策を考えた方がよさそうです。

 

 

一番怖いのは土砂崩れ

今回の豪雨でお亡くなりになられたのは土砂崩れにより埋もれてしまった方たちでした。多くの方が亡くなった2021年7月3日におこった熱海市での土砂崩れを見ても分かるように、残念ですが土砂崩れは巻き込まれてしまえば逃げようもなく、命を奪われる可能性が非常に高い災害です。

 

氾濫による浸水被害の場合は、避難するかどうか状況を見て判断する時間的猶予があります。しかし、土砂災害は一瞬で状況が変わるためいつ避難すべきか、タイミングが非常に難しいと感じました。

 

今回の岡谷市川岸で起こった土砂崩れも15日の午前5時ごろに発生しましたが、先ほどの雨量の表を見ても分かるように、雨は前々日13日の朝に降りだしたので何日も長雨が続いたわけではありませんでした。私も土砂崩れが起こるならもうちょっと先だろうと高を括っていました。実際には大量の雨であれば一晩二晩で状況は変わってしまうのです。

 

 

土砂崩れの場所は岡谷市の川岸駅前でしたが、山の近くにお住いであれば次はどこで発生してもおかしくはありません。これだけ山だらけの県だからまさか自分のところで起こらないだろうと思ってしまいがちですが、これを機に「○年に一度の豪雨」の時など、少しでも不安になる要素があれば早めに避難所や、近くの頼れる方のところなどに避難することを考えてみてください。

 

 

危険を知るためのツール

気象庁のキキクルのサイトではその時の土砂災害の危険度や想定される危険地帯を確認することもできます。

気象庁 | キキクル(危険度分布)

 

 

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自分の住んでいる地域を拡大してサイト内の4つのボタン↑の内、一番左を選ぶとその時の危険度が色分けで表示されます。また、一番右のマークをクリックするとそもそもの危険地帯が表示されますので簡易的なハザードマップとしても使えます。

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(キキクルの画像です。赤丸は私が色を付けました)

これはブログ作成時の状況なので当時と危険度の色分けとは違いますが、赤丸を付けたところが土砂崩れが発生した場所です。暗く塗りつぶされた部分が危険地帯を示しているので、やはり川岸駅前は元々危険な場所だとされていたことがわかります。

地域のハザードマップやこういったツールを是非活用してみてください。

 

ちなみに河川の水位の危険度はキキクル左から三番目のボタンをクリックすれば見れますし、先ほど画像で紹介したヤフーの河川水位情報でも確認できます。特にヤフーの方は複数個所に設置されたライブカメラで河川の状況が確認でき、川の水位もやはり複数個所に分けて表示されるので、どこが危ないのかひと目でわかり今回非常に重宝しました。いざという時ぜひ使ってみてください。

 

加えて、キキクルでは今後の雨量予測も確認できます。

気象庁 | 今後の雨(降水短時間予報)

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

豪雨の翌日の8月16日に諏訪湖の周りの様子を撮ってきたので参考になれば幸いです。


www.youtube.com