前方後円墳とは何なのか! 森将軍塚古墳(長野県千曲市)
今回は森将軍塚古墳に行った話です。
最寄り駅はしなの鉄道の屋代駅か屋代高校前駅で、どちらも森将軍塚古墳館まで徒歩で30分ぐらいかかります。そこから山道を上がっていくのですが、歩きなら20分くらい、古墳館から出ているバスを使えば5分ほどで着きます。
山道は結構しんどいですが、ご覧のような緑あふれる場所で、古墳館のバスぐらいしか通らない道なので空気がきれいで気持ちいいです。時間と体力があれば歩きをおすすめします。道中はところどころに古墳の解説ボードがいくつか設置されており、山道を登りつつ古墳の勉強もでき、徐々に理解が深まり、期待が高まっていきます。
古墳の本来の姿とは?
そしてたどり着いたのがこちらの森将軍塚古墳。森将軍とは、そういう名前の将軍がいたわけではなく古墳の識別のための名前なんだそうです。
当初こちらの古墳は建造から長い年月が経っていたので、地表は森林におおわれていました。
それを丸裸にしたのが下の写真です。
一枚目のように丸裸にしてから掘り起こし、発掘調査をして元通りに再現したのが2枚目の現在の姿です。並べてみると、どこがどの位置かよくわかります。古墳建設当初はこの再建後のような美しい姿だったわけですが、何もせず1700年ほど風雨にさらせば森林におおわれている上の写真の状態に戻ってしまうということです。
山の尾根を削って作られているので、古墳の上からは千曲市や長野市がある善光寺平(ぜんこうじだいら)を見渡すことができます。この地は縄文時代からの遺跡が多く残る地帯です。ここに葬られた主も、死後この地を見守れるようにこの場所を選んだのかもしれません。
盆地をはさんだ向かい側には北アルプスや戸隠連峰が望めます。
前方後円墳の仕組み
前方後円墳の四角い部分は丸い部分に向かう通路、もしくは儀式を行う場所だったのではないかと考えられています。
ここでシャーマンのような人が祈祷を捧げたのかもしれません。
そして一段高い丸い部分にこの地の王が埋葬されていました。
上から掘ると下の写真のように石室が出てきて、本来ここに棺が入っているはずなんですが、この古墳ではなくなっており、副葬品も盗まれていたようです。
2枚目の写真は古墳館にある石室を再現した実物大レプリカです。これと同じようなものが上の写真のきれいな玉砂利の下に今も保存されているそうです。さらには、棺はこの石室だけでなく、古墳の四角い部分や周囲にも多く埋められていました。これらの埋葬された時期は同じではなく、古墳時代の200~300年の間、この王と関係の近い者たちが、古墳を囲むように埋葬されていったのだと考えられています。
また、この古墳の丸い部分と四角の部分の関係が、現在の神社の本殿と拝殿の原型になっているのではないかという説もあり、なるほどと思いました。(武光誠さん著「古墳解読」)
誰が埋葬されているのか
古墳のサイズは長野県では最大で全長100mほどですが、日本最大の大山古墳(仁徳天皇陵古墳)と比べると足元にも及びません。
日本の 古墳時代とはざっくり言うと紀元300年から600年の300年間ぐらいですが、この古墳は古墳時代前期の300年代に作られたものです。後に多くの古墳が作られますが、この森将軍塚古墳を超えるサイズの物は県内では現れませんでした。
この古墳が特別である理由がもう一つあります。
それがこの三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)です。(墓荒らしにあってるので右のかけらしか残らず、左の物は模型です。)この鏡は大和王権が全国各地の王に政治的なつながりを結んだ証として与えられたものとされており、県内で発掘されたのはこの鏡一つだけです。このことからこの古墳には中央からこの地(しなの)の王と認められた人物が埋葬されていたことがわかります。
以上が森将軍塚古墳のレポートとなります。古墳館には実際の埴輪や副葬品が展示されており、いろいろな視点からの解説ボードが用意されており大変勉強になりました。隣には長野県立歴史館もあり、常設展はもちろんタイミングが良ければ面白い企画展もやってます。ぜひぜひ長野にお越しの際には立ち寄ってみてください!
最後までお読みいただきありがとうございました!
<おすすめ本>
こちらが途中で紹介した本です。元明治学院大学の教授の本です。200ページほどの新書で比較的簡単に読むことができ、古墳が当時どういう役割を果たしてきたのか、最新の学説を著者の見解を交えながらわかりやすく解説してくれます。年代ごとの古墳の特徴もまとめられているので、古墳巡りで古墳を目の前にした際に、役に立つと思います。特に300年余り続いた古墳とそれに伴う祖霊信仰が急に衰退していった理由が、アマテラスや身分を示す姓(かばね)の出現であるとの推論は面白く、なるほどと納得してしまいました。
古墳を勉強することで旅のモチベーションが一つ増えてよかったです。古墳に興味がある方にはおすすめです。