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縄文土器で縄文人の心を読み解く① カエル編  井戸尻考古館/長野県諏訪郡富士見町

 

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八ヶ岳の麓に位置する富士見町信濃境(しなのさかい)駅でおり、お目当ての井戸尻考古館に向かいます。標高900mを超え11月も下旬になり小雨もあいまってかなり寒く、霞がかった山々が街のすぐそこに見えます。このあたりは縄文時代からの遺跡が数多く残り、土器や住居跡など多数発掘されているようです。

 

 

信濃境駅から15分ほど歩いた所に井戸尻考古館があります。拝観料は大人300円でした。(2019年11月23日現在)

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考古館では多数の縄文土器や石器などを常備しています。パネルでは詳しい解説がされており、読んでいるだけでも面白い。ただ眺めるだけでない縄文の楽しみ方を教えてくれます。

 

特に面白かったのは縄文土器に描かれている模様をいくつかのパターンに分け紹介しているコーナー。(2019年10月現在)それを知っておくだけで何だか専門家になったような気分にさせてくれます。今回は展示されていたまたは人間とカエルの合いの子とされる半人半蛙像(はんじんはんあぞう)の模様を紹介します。

 

こちらは蛙文深鉢(かえるもんふかばち)と呼ばれる縄文土器です。

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こちらが蛙文(あもん)と呼ばれる蛙の模様です。よ~く見てもらうと分かると思いますが、だらしなくぶら下がった2本の紐のようなものが垂れ下がっています。これが足です。もちろん正解は作った縄文人しかわかりませんが、片足が軽く上がっているポーズは共通性があり、同じものをモチーフにしていることは間違いないようです。

 

足の上部に穴の開いた突起が見えます。これは双環突起(そうかんとっき)と呼ばれるもので蛙、もしくは半人半蛙像の顔だとされています。ずっとただの紐を通す穴だと思ってました・・・。

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こちらも少しタイプが違いますが、同じ蛙文もしくは半人半蛙文です。

蛙文有孔鍔付土器(かえるもんゆうこうつばつきどき)

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半人半蛙文深鉢(はんじんはんあもんふかばち)

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先ほどの物と 同じように2本の足が垂れ下がってますが、違うのは先が三つに分かれています。より写実的に描かれているのがわかります。

 

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こちらは蛙の足の模様とされています。先端に吸盤がついているのが見てとれますが、指先に吸盤があるのはアマガエルなどの蛙の特徴です。先ほどの三つまたに分かれた紐のような模様が蛙であることの有力な証拠と言えるでしょう。カエルの指は基本的には前足は4本、後足は5本です。ただネットなどでも確認すると分かりますが、正面から見ると3本にも見えるので、3本で表現していたとしてもそれほどおかしくないのではないでしょうか。

 

 

 

そしてこちらは館内に展示されていた中国の彩陶壺。紀元前2200年から紀元前4000年くらいのもののようです。どことなくデザインが似ていますが、それもそのはずこちらも蛙文です。館内パネルによると古代中国でも蛙を神聖化した文化があったそうです。

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こちらのボードに詳細が書かれています。

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上のパネルによると漢代(紀元前200年頃~紀元200年頃)の資料で、古代中国では月とヒキガエルのイメージには強いつながりがあるとされ、ヒキガエルは光らざる暗い月、つまりこれから蘇ろうとする月の不死性を表象していたようです。

こんなパネルもありました。

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これは中国で前漢初期(紀元前200年頃)の偉い政治家のお墓から出てきた絵のようです。薄い三日月にヒキガエルが乗っているのがわかります。

 

日本では月の模様と言えばウサギですが中国ではヒキガエルに見えているということを聞いたことがあるので、おそらくそういったことから来るイメージもあるのかもしれません。

 

つまり、このことから日本でも蛙が神聖視されていた可能性は十分にあるということです。北にしろ南にしろ半島からにしろ、大陸から移動してきた人たちが日本列島に棲みついたのですから、古代中国と縄文文化につながりがあったとしてもおかしくはありません。爬虫類は生命力の強いイメージがあるけど、両生類の蛙ってそんなに神聖視する要素あるのかなと疑問に思っていたのですが、なるほど中国の月とヒキガエルの不死性のイメージからきているとすれば納得です。

 

館内にはこのようなパネルもありました。

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世界の蛙と半人半蛙文の土器や陶器を年代で並べたものです。見ずらいので拡大してみてほしいのですが、左から「ヨーロッパ・ドナウ川流域」「西アジア・イラン高原」「中国黄河流域」「日本列島中部」と並んでいます。すべて蛙のような図柄が並んでいるのですが「中国黄河流域」からより時代が古いものが見つかっていることがわかります。

 

 

ただ先ほども言った通り答えは縄文人にしかわかりません。これを基礎にあーでもないこーでもないと考えてみてはいかがでしょうか。実際の土器を見てみるとさらにイマジネーションが湧いてくると思うのでお近くの方は井戸尻考古館ぜひ行ってみてください!

 

以上縄文土器の蛙文のトレーニングでした。

次回は「みづち」を紹介します。

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

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