天狗の住む霊山・パワースポット高尾山薬王院(やくおういん)に行ってみた。(東京都八王子市)
西東京を代表するパワースポット高尾山。ミシュラン初の日本版旅行ガイドブック(2007年)で、山では高尾山が富士山と共に3つ星の観光地として選ばれました。大都市近郊でありながら豊かな自然あふれる、その高尾山山頂近く、標高600mの山中に鎮座する高尾山薬王院(やくおういん)を訪ねてみました。
御本尊
薬王院はぽつんとあるような小さなお寺ではなく、境内は広い敷地を持ちます。
薬王院の正式名称は高尾山薬王院 有喜寺(ゆうきじ)で、現在は真言宗智山派(ちざんは)の三大本山のひとつに数えられています。御本尊は飯縄大権現(いづなだいごんげん)です。飯縄大権現とは元々は長野県北部にそびえる戸隠山(とがくしやま)、飯縄山(いいづなやま)の農耕をつかさどる神様でした。後に戸隠・飯縄山は山伏たちの修行場となり、そこから「飯縄法」と呼ばれる妖術が生まれます。その妖術がもたらすご利益から飯縄大権現は戦国武将の篤い信仰を集めるようになり、農耕の神から戦の神様とされるようになっていきます。武田信玄は懐に飯縄大権現の小像を入れていたと伝えられ、上杉謙信は兜の前面に飯縄大権現の像をまつっていたそうです。
ちょうど手元に戸隠連峰と飯縄山の写真がありました。長野県千曲市(ちくまし)側から撮影した時の写真です。写真左側奥のちょこんと飛び出ている山が戸隠連峰で、右側奥の高い山が飯縄山です。この辺は武田と上杉の勢力が拮抗した場所なのでどちらからも大切にされていたのかもしれません。
高尾山に話を戻すと薬王院は744年、高僧の行基(ぎょうき)により開山されました。下の写真は境内にある行基の碑です。当初薬王院の御本尊は薬師如来(やくしにょらい)で、薬王院の「薬王」は薬師如来に由来しました。
それから600年以上たった南北朝時代の1375年に今度は高僧の俊源大徳(しゅんげん たいとく)が飯縄大権現を勧請してきたことで、薬王院は再び広く信仰を集めるようになります。それ以来、飯縄大権現が御本尊となっているそうです。「権現」とは仏様がこの世にあらわれる仮の姿ですが、高尾山の飯縄大権現は不動明王とダキニ天が習合した仏の権現とされています。下の写真は境内の修行場に祀られた飯縄大権現像ですが、炎の光背、手に持った剣、羂索(けんさく/捕縛用の縄)は不動明王の特徴で、狐に乗っているのはダキニ天の特徴です。合体しちゃってます。
薬王院にはなぜ天狗がたくさんいるのか
境内を歩いてまず気づくことは天狗がたくさん祀られていることです。鼻が高いのは鼻高天狗(はなたかてんぐ/大天狗)。鼻が低く口が嘴(くちばし)みたいになっているのは烏天狗(からすてんぐ/小天狗)です。
お堂の両サイドに飾られた巨大なお面
随神門の裏も天狗でした。
天狗は飯縄大権現の眷属(けんぞく/神の使い)とされています。同時に除災開運、災厄消除、招福万来などのご利益の力を持つとして神格化されており、高尾山は飯縄信仰と共に天狗信仰の霊山としても知られています。
また高尾山は修験道の修行の場となっているため、呪力(超能力のようなもの)を体得した山伏と天狗を同一視することも多いといいます。
境内には天狗社(てんぐしゃ)という小さい社があり、天狗の特徴である下駄が奉納されていました。
そしてこれはやめられないやつです。
名だたる高僧のお堂がいっぱい!
高尾山ならではの面白いお堂もあります。こちらは神変堂(じんぺんどう)です。
役小角(えんのおづぬ)が祀られています。1300年程前の人で、山岳修験道(山伏)の開祖と言われています。亦の名を「神変大菩薩(じんぺんだいぼさつ)」といい、お参りの際には手を合わせ「南無(なむ)、神遍大菩薩」と唱えると足腰が健康になるご利益があるとされています。腰痛にも効くそうです。両脇に構えているのは狛犬ではなく役小角が呪力で手なずけたとされる2人の鬼です。
上の写真は偉いお坊さんの本堂への移動準備の風景。この後お坊さんたちはホラ貝に先導され、行列になって移動したのですが、頭に山伏がつける小さな帽子、頭襟(ときん)をつけていました。ここにも修験道や山伏との強いつながりが感じられます。
一方、下の写真のお堂に祀られているのは、修行大師で、あの弘法大師(こうぼうだいし)で有名な空海のことです。薬王院は真言宗ですが真言宗の開祖が空海です。お遍路ができない人は修行大師をお参りすると、お参りした人の代りに修行大師が遍路を行ってくれるという信仰があります。
石像も見かけました。
こちらも境内にある大師堂(たいしどう)です。同じく弘法大師が祀られています。
こちらの外周には四国お遍路の八十八のミニ霊場が設けられており、一周すれば四国お遍路と同じご利益があると言われています。四国のお遍路はおよそ1200㎞ですがここなら30mほどです。同じご利益でいいのだろうか・・・。
ここでは整備された砂利道を歩きながら、八十八体の小さい弘法大師像に下の写真のように一円ずつお供えしていくという作法があるようです。調べたところ太子堂の前に両替用の一円玉が用意されているようなのですが、この日は三が日で人が多かったからか見当たりませんでした。
境内には根本道場と記された場所があり、立ち入り禁止になっています。ここは屋外でする護摩行(火を使った修行)などに使われるようです。玉垣の結界で囲われており、異空間の気配が漂います。
心にブリーチをかけましょう!
先ほどから写真に見切れている石塔は六根清浄石車(ろっこんしょうじょういしぐるま)です。境内に18か所設置されており車の部分を各6回ずつ回し、合計108回まわし、108あると言われる煩悩から抜け出せるよう祈願します。「懺悔、懺悔、六根清浄(ざんげ、ざんげ、ろっこんしょうじょう)」と唱えながら回し、眼・耳・鼻・舌・体(身)・心(意)を清らかにすることを神仏に祈ります。
こちらは百八の石の階段。一歩一歩「南無、飯縄大権現(なむ、いづなだいごんげん)」と唱えながら上ることで御本尊様が108の煩悩を乗り越える後押しをしてくれます。
この二つの修行をやり遂げればまっさらさらの心に近づけるはず!
銭洗いもあるよ!
こちらの八大龍王(はちだいりゅうおう)が祀られている水場で銭洗いをすることができます。八大龍王は仏法の守護神とされていますが、この水場で硬貨、または紙幣を洗って持ち帰り、家業に精進すると福徳増進のご利益があるそうです。紙幣の場合は端を少し水につけるだけで大丈夫。
銭洗いも全力です。煩悩が全く落ちてない。
本当は下の写真の赤丸の所に福徳弁財天があり、そこで銭洗いしたかったのですが勘違いして八大龍王の方でしてしまいました。弁天堂にも銭洗いがあります。行きたい方は相当分かりにくいとことにあるので注意して行ってみてください。
(銭洗いと言えば、お正月にこんなチャレンジもやってみました。よかったらご覧ください。)
高尾山頂上も近い!
20分ほど歩けば高尾山の頂上の見晴らしを楽しむこともできます。肉眼だとなかなかわかりにくいですが、こちらが頂上から見た江の島です。
うっすらと見えるのは東京都心のビル群です。
そして反対側には富士山も見えました。
高尾山のおみくじ
おみくじはジャラジャラやるタイプの絵付おみくじでした。
アクセス
高尾線高尾山口駅から高尾登山ケーブルに乗ります。6分ほどで上まで上がりそこからなだらかな坂を歩いて20分程です。(108段階段はあります。ただ、少し遠回りすればなだらかな上り坂で進むこともできます。)
リフトでもケーブルカーでも行けます。今回はケーブルカーで。
勾配が急で楽しい!
大分長くなってしまいましたが、それでも半分くらい内容を削ったつもりです。表現が不敬かもしれませんが予想以上の仏教大テーマパークでした。興味のある方はぜひ参拝してみてください!
最後までご覧いただきありがとうございました。