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あの時、天皇・皇后は何を着ていたのか。即位礼正殿の儀、装束レプリカ展示② 

前回の①の記事のリンク→こちら

 

前回の続きです。

いよいよ今回は明治以降、日本風に改められ、令和の儀式でも使われた装束の解説です。

 

 

 

天皇の装束

 

こちらは東京国立博物館に展示されていた天皇の「即位礼正殿の儀」当日のお写真です。(ブログ掲載可能か確認済)

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こちらはその衣装レプリカです。

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平安時代以降の偉い人の正装を束帯(そくたい)と言いますが、これは 黄櫨染(こうろぜん)の御袍(ごほう)と呼ばれる束帯です。「黄櫨染」とは濃い黄褐色(おうかっしょく)の色彩で、夏の土用に真南にのぼる太陽の燃え盛る色とされ、古代中国の五行思想の中軸をなす色彩と言われています。「御袍」とは平安時代以降の上の写真のような形の装束を言います。

 

 

後ろからの写真と下に続く白い生地の柄のアップです。こちらは色違いですが高御座(たかみくら)の帳(とばり)の柄とほぼ一緒でした。よく使われる柄なのでしょうか?

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こちらが高御座の(とばり/カーテンみたいなやつです)。同じ模様です。

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こちらは靴。こちらも柄に注目してみました。

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 この文様は高御座の椅子にも使われており、古来、天皇が座る畳の縁に用いられた「繧繝縁(うんげんべり)」と同じ文様です。(2枚目の写真は本物の高御座の椅子。)四つの菱形が集まった菱紋(ひしもん)は昔から天皇家が好んで使った紋なんだそうです。

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Wikipediaより転載。後桃園天皇像(陽明文庫蔵)

 上の絵は第118代後桃園天皇。みどりの畳の縁に見えるのが「繧繝縁(うんげんべり)」です。

 

ちなみにプチ情報ですが、自分の息子を天皇にし、男系継承を乗っ取ろうとしていた言われる足利義満の肖像画は、この繧繝縁の上に座っており、その野心が垣間見られます。

 

こちらは石帯(せきたい)と呼ばれるベルトのようなものです。

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 アーチになっている部分はその外へ向かう反発力で、石帯にかぶさる様に見えている装束の台形部分の形が崩れにくくなるそうです。石帯の背中側は皮ですが、お腹側は紐になっています。

 

 

よく見ると生地には桐紋(きりもん)竹、鳳凰(ほうおう)麒麟(きりん)が描かれています。桐紋は平安時代から天皇家の装束で使われてきた模様です。f:id:kenkobit:20200126202910j:plain

 

これが桐紋。上の写真の模様の中に組み込まれているのがわかります。

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Wikipediaより転載。

五三の桐  by Hakko-daiodo

 

下の写真が桐の枝先です。古代中国ではアオギリに鳳凰が棲むといういわれがあり、正確にはアオギリは写真の桐とは違うようですが、桐紋もそのいわれに倣ってデザインされたそうです。桐紋は室町時代には小判などの貨幣に刻印されており、それ以降の政権でも用いられることがありました。現在では日本国政府の紋章であり、ツイッターの首相官邸のアカウントのアイコンなどにもこの紋章が使われています。

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Wikipediaより転載

花と葉をつけた桐の枝先 by KENPEI

 

鳳凰(ほうおう)麒麟(きりん)は高御座の下の台座にも描かれていました。

こちらが高御座の鳳凰と麒麟です。

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先ほどの生地の模様の中にもかわいい鳳凰と麒麟が描かれているので確認してみてください。

 

 

 皇后の装束

 

皇后さまの儀式当日の衣装の写真パネルです。(ブログ掲載可能か確認済)

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この装束は十二単(じゅうにひとえ)です。

白小袖(しろこそで)長袴(ながばかま)をつけ、その上に単(ひとえ)五衣(いつつぎぬ)打衣(うちぎぬ)表着(うわぎ)を重ね、唐衣(からぎぬ)裳(も)をつける平安時代に近い形式です。

 

一番上に来ている白地に黄緑の刺繍の入った衣が唐衣(からぎぬ)。後ろに長く引きづっている白い衣が裳(も)。下に履いている赤い袴が長袴(ながばかま)です。

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下の写真で見ると分かりやすいですが、白小袖(しろこそで)は一番肌に近い白い衣。単(ひとえ)はその上に見える濃い赤の衣。五衣(いつつぎぬ)は薄いピンクから赤にグラデーションしている五枚の衣。打衣(うちぎぬ)はカラーアクセント役に使われている濃い紫の衣。表着(うわぎ)は白地に紫の刺繍の入った一番目立つ衣です。

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刺繍が美しい。

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こちらは沓。見えずらいですが内側もただの白地ではなく模様がついています。長袴で隠れて見えないですけど靴はいてたんですね。

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皇后の髪型は江戸時代後期以来の形式であるおすべらかしです写真は上から平額(ひらびたい)、櫛(くし)、釵子(さいし)です。これで頭の前面の飾りを作っています。一番下は絵元結(えもとゆい)です。

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櫛には縁に張り付くようなデザインの菊紋が描かれていました。

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先ほどの写真の一番下に写っていたこの豪華な色彩の小さな棒のように見えるものは、絵元結という髪に結んで使うものです。おすべらかしの後ろは長くて細いポニーテールみたいになっているのですが、そのポニーテールの根本あたりに結んで飾ります。鳥の子紙(とりのこがみ)というなめらかで艶のある和紙の一種を巻いて棒状にし、絵を描いたものです。松・竹・鶴・亀を描いたりするものらしいので写真は松の絵だと思われます。

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即位礼正殿の儀で皇后が手に持っているものが気になっていたんですが、どうやら調べてみると扇のようです。檜扇(ひおうぎ)という宮中で用いられた檜でできた木製の扇で、絹糸を使った松と梅の造花で飾られ、6色の絹房という紐で閉じられています。絹房は開いたときは扇の両サイドに美しく垂れ下がります。長方形の朱色の物は帖紙(たとうがみ)といい、懐紙(かいし)を入れておき、歌を詠むときにメモ帳として使ったり、ハンカチ、鼻紙代わりに使ったようです。

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以上、即位礼正殿の儀の装束レプリカ展示の報告でした。十二単は簡単な説明のパネルはあったんですが、小物や衣を調べたりするのが結構大変で着ることなんてないのに少し詳しくなってしまいました・・・。こういった伝統的な衣装について調べることなんて日常生活ではなかなかないのでとてもいい機会になりました!また面白い展示会あったら探していってみたいです!

 

最後までご覧いただきありがとうございました!